2018年10月14日日曜日

その8 趣味と仕事の境界(3)






















「誰のために描くか」は実は大きな問題である。

たまたま自分の描きたいことが、世間のニーズに合っている
運の良い描き手もいるにはいる。
だが、断言できるが、プロの作家は必ずこの、
 「誰のために描くか」をきちんと意識している。

実際に編集部に持ち込むとわかるが、担当編集者が初めに、
新人に教育するのがこの理念である。
雑誌には「読者層」というのがあって、
例えば「週刊少年ジャンプ」の場合、おそらくだが、
現状圧倒的に10代の男子が多い。
当然、10代の男子が好む世界を描くよう指導される。

同じ意味で、レディースコミック誌に任侠漫画を描いても、
普通はスルーだろう。
ただ、世の中にはとんでもない天才がいるもので、
「ごくせん」のようにレディコミのカテで任侠描いて、
大ヒットになった作品もある。
これは「任侠」という特殊な世界を、女性が楽しめるように、
 アレンジしたことが、ヒットの要因として大きかったはず。

この「好む」「楽しめる」がつまり「誰のために描くか」だ。

これ別に難しいことではない。
自分の描くものを、楽しんでくれる読者を想定するだけ。
描きたいことを描いて、誰かがそれを楽しんでくれて、
お金を払ってもいいって感じてくれた時、
「趣味」は「仕事」への壁を突破する。
仕事とは、読者からお金を出してもらえる作品を創ること。
世知辛いようだが、プロはそれを実感し、実践している。
そして、楽しんでくれる人の数が多いほど、人気作家になる。

昨今、ネットに無料投稿サイトが大量に開設されているが、
個人的には、本気で漫画家になりたいと思ったら、
老舗の出版社に持ち込むことをお勧めする。
投稿サイトの場合、指導側は漫画に関しては素人が多い。
その点、老舗編集部には経験による蓄積で成立している、
ルールとノウハウがある。
それは耳に痛いほどに、貴重な学びにもなる。
編集者にも「プロ」と「アマチュア」がいるのだ。
「進撃の巨人」の大ヒットを見てもわかるように、
「当たり」の編集者はブームを創る力を持っているからね。

ニーズの話に戻るが、現在Web漫画業界は、ほぼ子供向け。
大人向けとなると、なぜか「レス夫婦」や「性格悪い女」
「サイコホラー」系の、隠キャ向きなものが目立つ。
陽キャ社会人向きは、ネットでは需要が無いと、
多くの配信会社は考えているのかも知れないが、
発想を転換すると、需要を作り出す事が出来れば、
トップランナーになれるとも言える。
一般電子書店が、大人世代にも認知されるようになった今、
ここでの需要を掘り起こせば、面白いことが起こるはず。

雨の日に、傘をささない習慣の国で、傘を売ればどうなるか。

「売れるわけない」
「どんどん売れる」

どちらも正解で、考え方の問題なのだ。




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